岩田聡の本当の命日、あるいは売り切りモバイルゲームが死んだ日
2012年4月27日(金)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡
あくまでお客様に提供するクリエイティブなコンテンツを制作したことに対する対価と客様にお金を支払っていただけるようにする」すなわち「構造的に射幸心を煽り、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、仮に一時的に高い収益性が得られたとしても、お客様との関係が長続きするとは考えていないので、今後とも行うつもりはまったくない」ということです。
これがもう5年前のことである。そしてその3年後に岩田氏は亡くなった。
そして本日、その任天堂が公式なパブリッシャーとしてリリースしたフリー・トゥ・スタートのスマートデバイス向けアプリ、その中の有料アイテムはこれである。
そして、ゲーム内の宣伝文句は以下の通り。
簡単に言うと「今ならキャラの排出確率が上がってるからガチャを回せ」以上のことを言ってない。
そして、キャラの排出とはこういう確率で行われる。
通常が3%のところ、今は6%になってるという話である。ただレアリティだけの話で見ると。
これを、特定のキャラ、例えば一番厳しいところで言うとルキナを得ようとすると、通常時は(1-(¾)5)×3×(1/14)=0.16343470982%*1が、0.92613002232%*2になっているという話になる。
簡単にするため、楽観的に書く*3と0.17%が0.93%になるから250円*4払えと言っている。運良く期待値を支払えば出るとしてそろばんをはじくと、0.93%のために250円を払う場合、26880円が相場になる。
これがクリエイティブなコンテンツを制作したことに対する対価というのか、構造的に射幸心を煽っていないというのか、この額は高額ではないと認識しているのか。
非常にレアなアイテムが手に入るとお客様が心理的にエキサイトするようなゲームの設計をして、お客様がついついボタンを押すと決済に進んでしまい、課金をしてしまうというようなものもあり、一部社会問題になっていると認識しています。ちなみに日本では、非常に収益性が高いと言われているスマートデバイス向けアプリでは、「Free to Start」で遊ばれている人たちの中で実際にお金を支払っている人の割合は非常に小さく、その非常に小さい割合の方がものすごくたくさんお金を払っています。それこそゲーム専用機ハードを何台も買えるような金額を払っているお客様もいらっしゃるぐらいだとお聞きしており
このような物の売り方をイベントとして続けていった結果「それこそゲーム専用機ハードを何台も買えるような金額」になってしまうのではないか。これ単体で見ても、Nintendo2DSであったら2台は買える。
長い間、少なくともパブリッシャーとしての任天堂は、射幸心を煽って高額な課金を行う場所へは踏み込まなかった。そして、それは最後まで岩田前社長が貫いた建前でもあった。そして今日、それを最大限に好意的に解釈したとしても、ゲーム内の非常にレアなアイテムとして25000円を設定することは高額ではない、という話になった。
モバイルゲームは完全に新しい時代を迎えた。岩田前社長が残したひとつの方針は変質し、それは、スマートデバイスにおいては売り切り型ゲームの敗北宣言である。
モバイルゲームは、ガチャを回すための集金装置となった。売り切り型アプリとそのデベロッパの生き残る道はすべて断たれてしまった。